(「インテリアに興味のない人も読める、インテリアの記事を書いてください」とのリクエストで、2019年9月から2020年2月まで地方新聞十数紙の趣味文化欄に連載された『読むインテリアレッスン』全20回を、時事通信社様の許可を得てこちらに掲載します)
色の効果を生かした空間
住まいの色に関する特集はインテリア誌の人気企画の一つで、カラーのプロと一緒にページを作る機会がよくありました。繰り返し伝えていたのは、空間における色の機能。視覚から受ける温度感や距離感、感情に働きかける作用などです。
試しに、次の質問に答えてみてください。①オレンジ色とブルーの部屋、暖かく感じるのは? ②オフホワイトと濃紺の部屋、広く見えるのは? ③淡い黄色と濃いグレーのダイニング、会話が弾むのは? ④赤と水色の書斎、仕事に集中できるのは? ⑤濃いピンクと淡いモスグリーンの寝室、よく眠れるのは?
正解は①②③が前者、④⑤は後者です。おそらく感覚的にわかりますよね。基本的に、活力を与えて気分を高揚させるのは暖色と鮮やかな色、穏やかに落ち着かせるのは寒色とくすんだ色です。
楽しい気分で会話を弾ませ、食欲も増進するオレンジ色や黄色が食空間に使われ、心を静めて集中力を高める淡い寒色系が書斎に使われるのは、この機能を活用した例。アースカラーやグリーンは、リラックスしたい場所に幅広く使えます。
また、淡い色が実際の面積より大きく見え、反対に濃い色が小さく見える現象、明るく鮮やかな暖色が暗くくすんだ寒色より前に出て見える現象を上手に組み合わせると、部屋の広さや奥行き感を実際以上に感じさせることもできます。そして空間の上の方に淡い色、下の方に濃い色を配置すると安定感のある雰囲気に、逆にすると非日常的でドラマチックな雰囲気になります。
……と、挙げればキリがないのですが、空間に色を意識的に使うことで、視覚からパワーをもらったり、癒しやリラックスを得たりすることができ、家で過ごす時間がもっと楽しくなります。よく考えずに無難な色のままにしておくのはもったいないですよ!
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